伝統産業の現場でよく聞かれる「デジタル化は技術を奪う」という不安
私たちがものづくりや伝統産業の現場にお伺いすると、最初によく聞かれるのがこの不安です。先代から受け継いだ技術やノウハウは、紙の帳票や口頭でのやり取りのなかに染み込んでいることが多く、「デジタル化」という言葉が、手仕事や勘を標準化・自動化されてしまうことへの抵抗感につながりやすいのです。
この不安は、ごく自然なものだと私たちは考えています。実際、技術そのものを無理にシステム化しようとすると、現場の反発を招き、定着しないまま終わることが少なくありません。
デジタル化すべきは「技術」ではなく「技術を支える周辺業務」
私たちが支援するときに大切にしているのは、技術そのものをシステムに置き換えるのではなく、技術者が技術に集中できる時間を増やすために、技術を支える周辺の事務作業からデジタル化することです。
たとえば、私たちが支援した基板実装メーカー(製造業)では、次のような周辺業務に時間がとられていました。
- 生産指示書の作成 — 1枚あたり15分から3分に短縮(月間300〜800枚の発行量換算で月60〜160時間を創出)
- 部品表(BOM)の転記 — 手入力3〜5時間の作業がワンクリック5〜10分に
- 勤怠管理 — タイムカードと紙・Excelの手入力を、約120名が毎日使うアプリとスプレッドシートに置き換え、月50時間以上を削減
いずれも、技術そのものではなく、技術の周りにある「転記」「集計」「記録」の作業です。ここをデジタル化しても、職人の手仕事や判断そのものが変わるわけではありません。
周辺業務を効率化すると、技術に使える時間が増える
周辺業務の時間が減ると、その分の時間を技術指導や後進の育成、品質へのこだわりに使えるようになります。たとえば塗装会社(建設業)の支援先では、現場日報をスマホ化したことで、月末の集計が3日から半日に短縮され、現場別の粗利を翌日には見える化できるようになりました。数字の集計に追われていた時間が、現場の判断や改善に使える時間に変わったということです。
伝統産業の現場でも、構造は同じだと私たちは考えています。技術の継承に充てたい時間が、転記や二重入力、紙の管理に奪われているとすれば、そこを整理することが技術を守る一歩になります。実際、福祉事業所では受給者証の期限管理をAI-OCRで自動化したことで、管理工数が月10時間から1時間に減り、期限切れの事故もゼロのまま継続できています。業種は違っても、「記録・管理に追われていた時間を、本来の仕事に戻す」という考え方は共通しています。
小さく始めて、現場が使い続けられる仕組みにする
私たちは、SAPやOracleのような大規模ERP(基幹システム)の導入はご提案しません。Google Workspace×GASを中心に、長年現場を支えてきた既存の仕組みを壊さず、その周りにある紙・転記・手入力の業務を効率化していく進め方です。初期費用は0円・月額のみで、2〜3ヶ月ほどで最初の仕組みが現場で動き始めます。
導入した後も、隔週で現場に伺い、動く試作品を実際に操作していただきながら作り込み、定着するまで伴走することを大切にしています。この進め方で、これまで解約は0件・プロジェクト継続率は100%です。対応エリアは大阪・京都・兵庫・奈良の関西4府県を中心に、福岡のお客様も定期訪問とオンラインの組み合わせでご支援しています。
技術を脅かさないデジタル化は、どの地域でも同じ考え方で進められます。「うちの技術には関係ない話だと思っていた」という段階のご相談でも構いません。まずは、技術の周りで時間を取られている業務を、一緒に整理するところから始めましょう。